精神歌の「とりあえず意味をとる」口語訳 |
文語で書かれた精神歌に対しいろいろな方が口語訳を試みておられるとのこと。私もという気になり、不肖をかえりみず、「とりあえず意味をとる」口語訳をつくってみた。
その後、黒澤 勉氏「「精神歌」 の心 「まこと」 を求めて 「ひかり」の道を」(二〇〇七年)を拝読した。教えられるところ多く、「精神歌」の解釈、口語訳として十分、という感想をもった。
もはや私訳など不要なのだが、乗りかかった船でもあるので、個人的なメモとして若干の改正版を下に書かせていただく。
(詩情を写す意図はゼロ、単に大意をとる散文であることをあらためてお断りしておきます。日本語最高の魔術師賢治の感覚を口語を含めて他言語に写すのは大変。平賀氏にあらためて敬意を表します。)
原詩
日ハ君臨シカガヤキハ
白金ノアメソソギタリ
ワレラハ黒キツチニ俯シ
マコトノクサノタネマケリ
日ハ君臨シ蒼穹ニ
ミナギリワタス青ビカリ
ヒカリノアセヲ感ズレバ
気圏ノキワミ隈モナシ
目ハ君臨シ玻璃ノマド
清澄ニシテ寂カナリ
サアレマコトヲ索メテハ
白亜ノ霧モアビヌベシ
日ハ君臨シカガヤキノ
太陽系ハマヒルナリ
ケワシキタビノナカニシテ
ワレラヒカリノミチヲフム
拙訳(試行訳)
陽は大空に輝いている
ああ恵みの雨だ
陽の光にきらめきながら落ちてくる
我ら黒き土に伏し
まことの種をまく
陽は大空に輝いている
突然の稲光り 雷だ
雨の気配を感じ空を見上げるのだが
はるか地平線の果てまで雲一つない
陽は大空に輝いている
学び舎のガラス窓は透き透り
教室は静粛そのものだ
まことの道を求める者は
(夢中で板書する賢治先生の)チョークの粉も甘んじようではないか
陽は大空に輝いている
太陽系はいま真昼だ
厳しき求道の旅のなか
我らは正しき道を歩むのだ
追記
ご批判をお願いします。「ここは意味を取り違えている」、「ここはこういう訳のほうがよいのではないか」といったご指摘をいただいて、多少なりとも改善したいと思います。
追記
精神歌は賢治による学生諸君への贈り物、応援歌だ。これだけ高邁な歌を贈られた方は大変だ。白墨の粉など無視せざるをえない。私は好んで
http://www.ihatov.cc/song/mp3/seisin_v3.mp3
を聴いています。