ゆふ涼み |
(房総の名花とうたわれた俳人・織本花嬌については,
http://homepage3.nifty.com/orimoto/newpage5.html
を参照)
一茶編「花嬌家集」は,富津大火のおり失われたとのこと。
残念。どこかの土蔵で発見というニュースを期待したい。
せめて,ということで今朝は,伝えられている彼女の句を鑑賞。
朝空や柳の河岸の炭俵
冬枯や中(仲)よく見ゆる三軒家
虫の音をあつめて星の夜明けかな
渡殿にねむ散る星の宵祭
若草やいとしき人のむかし道
用のない髪と思へば暑さかな
名月は乳房くはえて指さして
埋火や人来よがしの酒二合
など秀句。最後の三句など一茶調。
次は花嬌をうたった一茶の句。
うつくしき団扇持けり未亡人
五十年見れども見れども桜かな
近よれば祟る榎(えのき)ぞゆふ涼み
(花嬌の前の俳号が夏花、榎は木扁に夏、つまり榎とは花嬌をさす,とのこと)
故ありてさわらぬ木なり夕涼み
我星は上総の空をうろつくか
木に鳴(なく)はやもめ烏(からす)や天川(あまのがわ)
草花やいふもかたるも秋の風(花嬌急逝後)
蕣(あさがお)の花もきのふのきのふ哉
目覚しのぼたん芍薬でありしよな
何ぞいうはりあいもなし芥子(けしの)花(はな)
亡き母や海見る度に見る度に
露の世は得心ながらさりながら
越後の良寛と貞心尼は相聞歌をかわしたが,少し先輩にあたる信濃の一茶は空振り三振。
若草やいとしき人のむかし道
などと決定打をうたれて,気の毒といえば気の毒だが,一茶らしくてよい。