ロールズと歎異抄 |
ラバウル10万の将兵を指揮した今村均陸軍大将の評伝。
制海空権を失い、補給路が断たれることを予期して地下要塞を作り上げ米軍を待ち構えたが,敬遠され,玉砕することなく終戦を迎えた。
オーストラリア軍による戦犯法廷で多くの部下が処刑されるなか,かれらをかばい,南太平洋の戦犯刑務所にとどまり,帰国後も旧部下と遺族のために生きた。
「私も後でゆく」と言いながら特攻隊を送り,戦後も生き延びた指揮官たちとは対極にある。
われわれのすぐれた先輩だ。
(http://markdarcy.exblog.jp/4636613/)
以前野村胡堂の伝記を読んでいたら,太平洋戦争中,夭折した愛息が愛読していた内村鑑三全集を所望した将軍がいて,考えた末譲ることにした,という話があった。
その将軍とは今村さんだったようだ。
内村鑑三全集は南方に向かう途中,飛行機が墜落し,今村さんの所に届かなかったよし。
戦後出所後,そのことを知った今村さんは胡堂宅を訪ね,お礼とお詫びを述べたとのこと。
さて歎異抄。
「善人なおもて往生す。いわんや悪人おや」
法然、親鸞の悪人正機説である。
今村さんは,聖書と歎異抄をはなさず,両者は基本的に同じことを述べている,としていたとのこと。
まあ,賛成。
私見では,
善人:恵まれた人,悪人:恵まれない人
この世で恵まれた人たちが往生するんだ,恵まれない人が往生するのは当然だ。
み仏はえこひいきされない。
恵まれた人たちは問題ない。恵まれているのだから。
問題は恵まれない人たちだ。
み仏はこの人々にもっぱら心を注いでくださる。(*)
これは私の解釈。
ついでに(*)の解釈。
(*)は、「恵まれない人々に心を注ぐことこそ尊い」
と言っている。
これはロールズ格差原理と同質の思想。
全部同じ色で塗るのは悪趣味だ、という批判がありそうだが、私としては納得している。