いかに身を修めるか |
辞書を見たら,次の言葉から来ているとあった。
修身斉家治国平天下(しゅうしんせいかちこくへいてんか)
《「礼記」大学から》
天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、そして天下を平和にすべきである。
わが国の指導者に聞かせたい言葉だ。
戦前「修身」の時間があった。戦後GHQにより軍国主義のシンボルとして廃止され,「道徳」の時間となった,ということは知っている。
しかし,
「エピローグ 修身斉家治国平天下こそ民主主義教育の柱に相応しい
www.fujitsubame.jp/democracyeep.html」
にあるように,「修身」は捨てがたい。
道徳というと,数学や物理のように,きまった法則がありそれを学ぶ,と受けとられるだろう。
しかし,そのような法則としては「他人にしてもらいことを行い,してもらいたくないことはしない」で終わり。
わざわざ数年かける必要はない。
無理してやると形骸化・・・は目にみえている。
「身を修める」ことは,それを広義にーself managementといった意味にとれば,「道徳」より広く,より根源的で,多くの人がその必要性をうけいれる,と思う。
生きるにあたって「身を修める」ことがいかに困難か,ということは多くの人が了解していよう。
生きるのはたやすくない。
若い人もそうだろうが,年配になると実感が高まりそうだ。
「修身」を導入して,それを戦前のように皇国史観により実装しよう,というつもりの人はいるかもしれない。
しかし,いても少数だろう。
「3.11」後の日本で,修身を皇国史観や「神の国」論により実装するなどということはありえない。
修身はこの概念にぴったりの言葉だと思うが,その誤用の記憶をきらう人も多いだろう。
別の言葉がみつかればよいのだが・・
さて,「修身」を強制することはよくないし,できない。
「自己修身」が基本。
しかし,年嵩の者によるヘルプは悪くないし,役に立つケースも多いだろう。
ではどのようにヘルプするか。
とくに教室で,ということになるとどうか。
私がよいと思うのは,すぐれた先人の行き様に触れてもらうこと。
なんだ,それでは,明治天皇,豊臣秀吉,二宮尊徳,・・・という戦前の話と同じではないか!という疑いがあろう。
そこは「選択」の問題,各ヘルパーの(今の時代を生きるわれわれの)腕の見せ所である。
追記
ネットをざっと見たところ,”School Management - Moral Training”と題する次の文章があった。
The Need of Moral Education.-The highest aim of education is the formation of character. Sound ethical training, no doubt, calls for the due cultivation of the intellectual and physical faculties, as well as the development of the emotional nature. Mere physical and intellectual power may, however, do harm if achieved regardless of moral training. Morality is essential to the welfare of the State. History affords numerous illustrations of the disastrous results that follow when the intellect is sharpened, but the moral nature neglected. The rapid growth of knowledge among the community, and the increased power which intellectual attainments give, render the question of national ethics more and more pressing on public attention. The extension of commerce, the growth of industries, the spread of democratic institutions, and the dependence of individuals and communities upon one another, make it imperative that principles of righteousness should form an essential part of every child's education. ・・・
ふむ,立派な文章,と思って日付を見たら,(Originally Published 1897)とあった。
追記
安倍さんが暮れに靖国神社を参拝して、同盟国のアメリカを「失望」させ、諸友好国を当惑させている。
安倍さんにとくに関心はなかったが、遅まきながら彼が属するグループを調べる気になった。
「神政連」がすぐヒットした。
神道政治連盟(神政連)
日本の保守系政治団体・宗教団体。神社本庁(伊勢神宮を本宗とし、日本各地の約8万社の神社を包括する宗教法人)を母体とし、神社本庁の宗教的価値観の政治浸透をはかるために、1969年に結成された。主に自由民主党を支持しており、多くの自民党議員が神道政治連盟国会議員懇談会に所属している。
神道政治連盟国会議員懇談会
自民党を中心に、261名の国会議員(衆議院191名・参議院70名)が超党派で参加している(2013年12月2日現在)。2013年現在の会長は安倍晋三。
活動等
2000年に内閣総理大臣(当時)の森喜朗が懇談会結成30周年記念祝賀会にて「神の国発言」を行った。その発言内容だけでなく、首相が宗教関係団体へ参加していることに対して政教分離の面から批判された。
・・
ふむ。
厚生省援護局と靖国神社が、A級戦犯を合祀すること、ただし「外部発表は避ける」ことを合意したのが1969年1月とのことだから、1969年結成の神政連や同国会議員懇談会はそれをサポートすべく結成されたのだろう。政界の側の現在のトップが安倍さん。彼の「国防軍」構想等はこの背景で評価しなければならないことになりそうだ。
上で<「3.11」後の日本で,修身を皇国史観や「神の国」論により実装するなどということはありえない>と書いたが、訂正する必要がありそうだ。
私としては、勝海舟ー坂本龍馬ー渋沢栄一のライン、伝統は尊重しつつ世界の自由民主主義の発展に貢献するラインで行ってもらいたい。