密命ーカナクギ惣三寒月霞斬り |
追記
〈巻之三〉「残月無想斬り」読了。 百五十六歳の老刺客石動奇嶽登場。江戸の町で次々に起こる殺人、すべて一刀の下に絶命。命を奪われたのは将軍吉宗有縁の人々。ねらいは吉宗にあると知った金杉惣三郎が、恐るべき剣士を抑えるべく奇策を考案。享保の江戸に、三方ヶ原の戦い絵巻・・。吉宗、大岡忠相に見込まれた惣三郎、ついに吉宗直属の旗本に。豊後相良藩帰藩の日を夢見て、将軍の密命をおびて活躍・・というシリーズの骨格ができた感じ。
〈巻之四〉「刺 客―密命・斬月剣」読了。酒毒に冒された金杉惣三郎、よれよれ、何者かに斬られて新川に転落、行方不明。京の都に「仙石十四郎」登場。姿かたちをかえた金杉惣三郎(あの暗殺は何だったのだ?)。尾張宗春上洛。公卿と打倒吉宗を密議。7名の剣客を障害となる吉宗密偵金杉惣三郎に次々に送る。東海道でそれを迎えうつ惣三郎。
〈巻之五〉 「火頭―密命・紅蓮剣」読了。大店を狙った連続火付事件。無残な殺戮の後に大岡忠相をあざ笑う書付。凶悪極まる犯行グループに対する町方必死の探索。これはおもしろかった。完成度の高い卷。家族での鹿島行き、菊の鉢をしのたちが南町奉行所に持参する話など、ところどころに「ホロリ話」があり、よかった。妻しの、娘みわ、札差の冠阿弥、彼の娘お杏、火事始末御用の荒神屋喜八、芝鳶の辰吉、南町奉行大岡忠相、同心西村桐十郎、その配下花火の房乃助などの「なかよしグループ」もよい。しかし、私としては、ここまで来ると、ストーリーを追った超速読。
〈巻之六〉「 兇刃―密命・一期一殺」読了。(「BOOK」データベース)「長屋暮らしの金杉惣三郎の許に突如、豊後相良藩から使者が到着した。藩主斎木高玖の側室・清香に御法度である“きりしたんばてれん”の疑いがかかり、藩自体が窮地に陥っているという。旧主を救うべく立ち上がる惣三郎に、次々と襲いかかる兇刃の影。さらに、惣三郎極意の寒月霞斬りを超える“一期一殺剣”とは?」この通りなのだが、この卷もおもしろい。ただ、「一期一殺剣」は大したことなかった。複数の話を同時進行させるのが著者の得意技。この卷でも効果的。生まれたばかりの半次郎が<闇夜にゃ出会いたくない野郎>「棺桶の為三郎」にさらわれハラハラ。このシリーズの新星「鐘きの昇平」が活躍。大岡忠相と惣三郎との会話「お顔が邪悪(よこしま)にございますぞ」が秀逸。忠相の「有馬様、棺桶なる男、南の牢内でよう鳴きまする」も秀逸。
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を発見。第一巻だけだが、映像化されたものを楽しめる。配役には少し疑問を感じるものの、まあ楽しめる。
疑問を感じると書いたが:榎木孝明、寺田農、加藤剛、伊吹吾郎、梨本謙次郎、安達祐実、とよた真帆という配役はかなりよいかも。喜八役の加藤剛はピッタリ。寺田農はさすが。惣三役の榎木孝明、続きを読む際、彼のイメージで惣三を読む羽目になった。お杏はいま少し背が高ければよいのだが・・これはないものねだり。これもTV東京だった。祈「テレ東女子」出現。
追記
事情があり(行きつけの図書館で貸し出し中、同好の士がおられるようだ)、「追善―密命・死の舞」〈巻之十三〉から読書再開。7巻から12巻まで飛ばしたことになる。その間いろいろな出来事があったようだ。清之助が成長、いっぱしの剣士として武者修行の旅。今回は大和柳生。やはりおもしろい。読了。惣三郎は江戸、鹿島、清之助は奈良、大和柳生。別の空の下、亡き米津寛兵衛の1周忌供養。奥山佐太夫と惣三郎との形奉納演武は圧巻。「寛兵衛どの、久しぶりかな」の声掛けもよい。
脱線
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」初回、第2回とみた。初回はよかった。はじめのナレーションが「坂の上の雲」を踏襲しているのはよいとしても、安倍氏に「脅されて」の(?)長州の物語は気になる。第3回は「見送り」。
今数えたところ佐伯時代小説「40冊狩り」達成。ちと多すぎる気もするが・・
追記
〈巻之十四〉「遠謀 密命・血の絆」読了。次女「結衣」出奔。尾張柳生の陰謀。清之助が滞在する大和柳生を訪れる不気味な尾張柳生5剣士。惣三郎、清之助、結衣救出のため尾張で合流。死去したはずの柳生連也斉登場。
追記
〈巻之十五〉「無力 密命・親子鷹」読了。惣三郎、修行御礼のため清之助、結衣とともに柳生入り。金杉父子をむかえて、石舟斉、連也斉ゆかりの大和柳生の里で「柳生大稽古」開催。近隣諸藩から大稽古参加志願者が続々柳生入り。それにまぎれこむ尾張の刺客たち。たしかに「瞠目の」卷だ。江戸では、みわとめ組「鐘き」の昇平急接近。
追記
「烏鷺―密命・飛鳥山黒白」〈巻之十六〉読了。惣三郎、結衣1年ぶりに江戸に戻る。途中4人の若い武士たち、「日光の円蔵」 と出会う。4人の若者のなかの一人が、後に結衣の夫となりそうな跡部弦太郎。盛大な出迎えを受けた後、旅の疲れをとるため飛鳥山の別邸で静養。そこで起きる謎の連続暗殺事件。江戸に帰るまではおもしろかったが、飛鳥山での話はやや精彩を欠くという印象。「ひと休み」の卷か。
追記
「初心―密命・闇参篭」〈巻之十七〉読了。「大和・柳生の庄を去った金杉清之助は、若狭・小浜城下に。その地で狼藉をくり返す馬群の盗賊団「海天狗」に憤った清之助は、敦賀半島突端にある敵の塒へ乗り込む。越前永平寺では、武術者としての悟りを求め、岩穴にて完全の闇に閉ざされる荒行「三十三日闇参篭」に挑む」(「BOOK」データベース)という卷。江戸では、惣三郎一家が旗本跡部家に招かれる。結衣、弦太郎の「二人の母」と対面。その話をはさんで、清之助、酒井家小浜城下で活躍。謎の盗賊団「海天狗」を退治。永平寺で「三十三日闇参篭」を達成、いよいよ剣禅一如の境地。江戸の惣三郎は五十路入り。みわや結衣から見ると相変わらずの「鉄砲玉」。
追記
「初陣―密命・霜夜炎返し」〈巻之七〉入手、読了。巻乃六から卷乃十三に飛んだから、時計のネジを巻き戻したことになる。吉宗号令の「享保剣術大試合」の巻。「未来」に行っていたから結果は知っていたが、ワクワク読書。例によって別の話を組み込んで、剣術大試合に至る。スリル添加役の「一乗寺菊小童」がめざわりだが、惣三郎・清之助ファンにとっては読み過ごせない卷。津軽卜伝流の剣術家・棟方新左衛門登場。惣三郎の紹介で石見道場師範から豊後相良藩剣術指南へ。
追記
「悲恋―密命・尾張柳生剣」〈巻之八〉読了。みわ誘拐される。 尾張四天王、次々に惣三郎を襲う。これは「休み」の巻か。南町同心西村桐十郎、野衣と祝言。
追記
「極意―密命・御庭番斬殺」〈巻之九〉読了。「将軍吉宗が放った御庭番が、江戸城の中奥で惨殺された。しかも胸元深くの一閃で、よほどの手練の技である。享保の改革を施行してから再び尾張藩に不穏な動きが見え始めたのだ。吉宗の密命を受け、今一人行方を絶った御庭番を探索する金杉惣三郎に、信抜流居合の恐るべき剣が対峙する」という話。サスペンス調の話の展開で楽しめた。御庭番と惣三郎の協力開始。
「遺恨―密命・影ノ剣」〈巻之十〉 読了。清之助の師匠米津寛兵衛が他界。老衰ではなく、武者修行者との立ち会いによる惨死というショッキングな死。米津寛兵衛に惨死などという死を与えてくれるなと思うが、著者は非情。嘆きの巻ではあるが、朗報も。好漢剣士棟方新左衛門、久村家の分家の娘とお見合い。寛兵衛老を倒した鷲村次郎太兵衛に狙われ危かったが、大事に至らず。鷲村次郎太兵衛を最後に惣三郎が討ち果たすのだが、尾張の刺客は次々と討たれ「人材不足」に陥るのではあるまいか、と余計な心配。
「残夢―密命・熊野秘法剣」〈巻之十一〉読了。「江戸に火付け強盗が横行するなか、吉宗公の紀伊藩下屋敷が襲われた。十数人の少女が殺され、唯一の目撃者である鶴女は廃人同様に。金杉惣三郎が彼女を癒やすべく菊屋敷に預かるや、熊野の修験者たちが次々と襲ってきた。やがて、鶴女の記憶が甦るとき、修験者たちとの想像を絶する死闘が繰り広げられる」。これもサスペンス風で充実。「惣三郎なしではどうにもならない」風になってきた。好漢棟方新左衛門は順調。米津寛兵衛を失った鹿島道場支援のため惣三郎に同行した好漢棟方新左衛門、鹿島でも人気。
「乱雲―密命・傀儡剣合わせ鏡」〈巻之十二〉読了。「回国修行を続ける金杉惣三郎長男・清之助の姿は、紀州和歌山城下にあった。紀州は将軍吉宗のお膝元、ところがここにまで吉宗憎しの尾張勢の暗躍があった。清之助は、ひたすら大和街道を北上するが、尾張黒装束団の追撃を受け、銃弾が!息子の危難を感知して神仏に祈るしの。父から子へ」。清之助@紀州和歌山。居合の田宮道場で修行。剣戟のさなか黒装束団が銃撃、下腹部に命中。危うし清之助!清之助が「父を超える」ことを修行の目的に置いていることをあきらかにした卷。
これで「ミッシング・リンク」だった7巻~12巻を充足。「享保剣術大試合」と米津寛兵衛の死、好漢棟方新左衛門話、みわ、結衣姉妹、しの、お杏、静香、野衣、葉月の「女子会」がハイライト。
追記
「遺髪―密命・加賀の変」〈巻之十八〉読了。元の流れに復帰。清之助、若狭から北陸路を北上、加賀前田藩に到着。金沢きっての富田清源道場を訪れる。そこで金沢流「大歓迎」を受ける・・。大歓迎はおもしろいのだが、他はやや凡庸か。
「意地―密命・具足武者の怪」〈巻之十九〉読了。「金杉惣三郎に、突如襲いかかった不気味な具足武者!泰平の世にふさわしからぬ姿で暗躍する彼らの正体、そして惣三郎に下された新たな密命とは…。一方、回国修行中の息子・清之助は佐渡島へ渡り、荒ぶる海と、金銀の盗掘を行なう至近十郎兵衛一味に相対していた。江戸と佐渡、父子の必殺剣がますます冴える」。佐渡のほうはあまりおもしろくないが、江戸はおもしろい。惣三郎が、将軍吉宗、老中水野忠之と直接接触。吉宗との会話は秀逸。吉宗の命で再び「剣術大試合」の開催決定。たのしみである。
「宣告 ―密命・雪中行」(巻之二十) 読了。本のカバーに「将軍吉宗公主催の大剣術大会まで一年足らず。春遠い越後で修行の仕上げに励む金杉清之助は、江戸に向かう年若い姉弟と同道することに。雪深い地で育まれる友情、しかし村上藩の重大な使命を帯びた姉弟を、次々と刺客が襲う……。その頃、江戸の父・惣三郎の口からは驚くべき“宣告”が発せられていた! 父子の想いが交錯する、衝撃のシリーズ第二十弾」とある。「衝撃的」なのは、惣三郎が(偶然神保桂次郎なる青年剣士を見つけ)清之助を倒す!と決意したところか。長岡の山中での冬次郎たちとの冬稽古など、おもしろかった。
「相剋―密命・陸奥巴波」〈巻之二十一〉 読了。帯には「父・金杉惣三郎が、神保桂次郎ととともに江戸を出奔。全ては、桂次郎を息子・清之助を凌ぐ剣者に育てるためだった!峻烈なる父の思惑に慄然としつつも、武勇で知られる奥州・仙台藩でさらなる高みを目指す清之助。一方、惣三郎との過酷な修行に、自らの剣を見失った桂次郎も同地へと向かっていた。葛藤する三者の魂がぶつかり合い激しく渦巻く、緊迫の二十一弾」とある。仙台藩道場での清之助の戦いがおもしろい。青葉城での藩主との立ち合いなど読みどころ満載。清之助ファンにとっては最高のごちそうの巻。父惣三郎にかわって清之助が主役に躍り出た巻でもある。惣三郎の巻き返しに期待?
「再生―密命・恐山地吹雪」〈巻之二十二〉読了。「仙台の藩道場で門弟に敗れ、己の心弱さを思い知った神保桂次郎は、剣者としての再起を懸け、聖地・出羽三山で必死の山行を行なっていた。そして、傍らで見守る金杉惣三郎にも、ある心境の変化が…。同じ頃清之助は、八戸藩で拐かされた子供たちを救うため、恐山へと向かっていた。烈風吹き荒れる索漠とした北辺の地で、清之助を待ち受ける死と再生の試練とは―」。神保桂次郎の方はあまり興味が湧かない。清之助の方は、謎の海賊たちとの戦い、八戸藩の「歓迎」ぶりはおもしろいものの、恐山の話は夏目シリーズでお馴染みなのでパス。個人的には父と子の戦いは不歓迎。残り4卷。
「仇敵― 密命・決戦前夜」〈巻之二十三〉、「切羽 ―密命・潰し合い中山道」〈巻之二十四〉読了。「引っ張りすぎ」という印象。かなりスキップして読んだ。惣三郎、宿敵尾張藩のふところに飛び込むという奇策。なにはともあれ、決戦直前、清之助、神保桂次郎、無事江戸到着。清之助は勝ちそうだが、惣三郎死す、という結末になりそうな雲行き。読者にストレスを与えてもらいたくないものだ。
「覇者―密命・上覧剣術大試合」〈巻之二十五〉読了。上覧剣術大試合終了。2011年刊行。4年前か。大試合そのものはよいのだが、最後にきてカナクギ惣三に与えた役どころには不満。なぜすべてを捨てて神保桂次郎に肩入れするのかー不可解。「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」話にもっていきたかったのだろうが、手元が狂って意味不明になってしまった。惣三郎ファミリーは庶民的でヒューマンなところが売りだったと思うが、神保桂次郎が死んでしまってはどうにもならない。
「晩節―密命・終の一刀」〈巻之二十六〉読了。最終巻。この巻はおもしろかった。ただ、「桂次郎使い捨て」は悪手。「有為の青年桂次郎を死なせての金杉家の安泰」は途中までのカナクギ惣三なら決して潔しとしない道行。金杉惣三郎を金杉惣三郎のままでおいてほしかった。
数えてみたところ、佐伯時代小説「50冊狩り!」達成。三月で50冊だからなかなかのハイペース。これでも4分の1程度とのこと。「200冊狩り」までいくかどうかわからないが、さらにおつきあいする予定。なお、このところの読書はほとんどすべて近くの公共図書館のお世話になっている。図書館の社会的意義は大きい。私のようなビンボーな人間でも本を読み、庶民的・民主的思想を育むことができる。