読書感想文についての提案 |
そのひな型は「起承転結」の構成をもっている。
この構成が、絶句(五言絶句、七言絶句)という漢詩の形式に由来することはよく知られている。
起承転結の構成は、物事をドラマチックに、もしくは退屈させないように、述べる形式としてすぐれている。
多くのライターがこの構成を愛用していると思う。
だから、生徒たちにもその書き方を学んでもらうというつもりで、読書感想文を書くという宿題がだされているのだろう(もちろん、それをきっかけに読書に親しんでもらうという意図もあろう)。
私の考えでは、「起承転結」は高級な文章構成法である。
杜甫や李白等の上級者にはフィットする。
しかし、初心者にはフィットするとは言えない。
(拷問風夏休み宿題読書感想文という)トラブルの源はここにある。
高級すぎるのだ。
文章構成法を習うのなら、もっと簡単な構成法で習うのがよい。
「起承転結」に対する代替候補としてあげたいのは、以前紹介した(英文エッセイ作成法)「ファイブ・パラグラフ・エッセイ」である。
それは、「はじめに結論(主張)、それを支える理由3つ、結論」というシンプルな構成をもつ。
シンプルだから、誰でも書ける。
ただし、「ファイブ・パラグラフ・エッセイ」は主張を述べるものだから、本を読んで感想を書く「読書感想文」とは別のカテゴリーに属す。
わが国でいう「小論文」だろうか。
宿題形式としては、「本を読んで感想を述べなさい」ではなく「文章を読んで(映像を見て、いろいろ調べて、でもよい)、自分の考えを述べなさい」という課題になる。
この課題に取り組むことで、考えを述べる、筋道立てて主張する能力が育つ(可能性がある)。
読書感想文ではなく、小論文(エッセイ)提出をもとめる、という風に宿題文化を変える時期に来ているのではないか(もちろん「宿題廃止」という選択肢もある)。
平成20年度から大学入試のスタイルが大きく変わるとのこと。
思考力を見る、という方向に大きく舵を切る、という話である。
よいタイミングである。
戦後70年を機会に、ときに「罪つくり」の(あるいは、コストパフォーマンスが高いと言いにくい)宿題としての読書感想文廃止、ファイブ・パラグラフ・エッセイへの変更(あるいは夏休みの宿題廃止)、というのが私の提案である。