中等哲学教育A Level Philosophy |
イギリスの大学制度はわが国と異なり3年間、専門教育を行う。その前に学生諸君は、「イヤー11、12、13」(日本の高1・2・3年にあたる)の後半2年間、わが国の大学1,2年の一般教養課程に相当する教育を受け、成果をはかる試験を受けた後、その成績をもって大学受験、進学するとのこと。
この2年間の間に行われる哲学教育がA Level Philosophy、Lacewingさんのサイトはそのためのもの、ということなる。
(イギリスの中等教育は)<基本的に、得た知識でものを考えることを訓練することを重んじている。さまざまな答を導き出してみることや正解に至るプロセスを通して個人の能力を養うのが教育だと考えられているからだ。その考えが試験方法にもあらわれている。試験はすべて自分の考えをまとめる記述式。授業も常に時分の考えを発言することを求められる>そうである
(http://www.koukou-ryugaku.net/guide/uk.shtml)。
それを反映して、力の入ったサイト。
A Level Philosophy (ALP) provides training and resources for teachers and students of A Level philosophy and religious studies for Years 12 and 13. We also organise talks and conferences in schools.
とある。
このサイトに、Why philosophy?という記事があった。
A Level Philosophyをなぜとるのか、なぜPhilosophyを学ぶのか、という当然の疑問について、ていねいに回答している。
大変coolで感心した。(紹介するかどうか考慮中)
最後の部分で、
Philosophy students do better in verbal and writing skills than students with any other degree in the standard “GRE’ entrance examination for post-graduate study in the USA.
と、A Level Philosophyを学ぶことの効用を実績グラフ付きでアッピールしている。
(GRE(Graduate Record Examination):イギリスや、アメリカ、カナダなどの大学院へ進学するのに必要な共通試験。一般知識を問う General Test はWriting:Analytical Writing 論文、Verbal:Verbal Reasoning 英語、Quantitative Reasoning 数学、から成る)
「良質の哲学教育を受けることを通して、(他分野の教育と比べても)高い議論力、ライテイング能力が養われる」ーこれは望みうる。
「論理的に議論する力、高いライテイング能力」にははっきりした社会的ニーズがあると思う。
哲学教育担当者は、このことに留意する必要があると思う。
昨今の雲行きを見ても、哲学を学んだ=(よい意味での)generalistとして高い潜在能力をもつ、とならないと、いろいろ困るだろう。
(専門教育カリキュラム編成者向けの話になるが)、哲学教育の目標の一つに上を含め、それが達成されると見込まれるようなカリキュラムの編成(あるいは再編成)を心がけるべきだと思う。
(私は、「一日2、3行すすむ」(オーバーに書けば)風の古典演習の有効性には懐疑的である。もちろん、ポイントの箇所にあえて時間をかけることには反対しない。)
大昔の話になるが、ある先生(すぐれた先生ではあった)が授業中ニコニコしながら「学生サラブレット論」のようなことを話された。サラブレットなら放っておいても走り出す、というわけである。やや心外に感じた覚えがある。自分で走れ、と激励していただいたのだろうが、システムとしてはいろいろご用意いただいてもバチはあたらないと思う。