百万石の留守居役 |
4代将軍家綱、死の床。
「江戸城の実権を握る大老酒井忠清は、なんと外様大名の加賀藩主前田綱紀を、次期将軍に擁立しようとする。外様潰しの策略か、親藩入りの好機か。藩論は真っ二つ。襲撃された重臣前田直作を助けた若き藩士瀬能数馬の運命も、大きく動き出そうとしていた」
ということで物語がはじまる。
この時代、加賀の太守は前田綱紀、幕府大老が「下馬将軍」酒井雅楽頭忠清。
第三巻まで読了。上杉・直江兼続と縁のある本多政長と、(物語の主人公瀬能数馬と婚約する)娘琴姫がおもしろい。
全体としておもしろいのだが、密度で言えば、奥右筆秘帳がずっと上。
「密約 百万石の留守居役(五)」読了。これが最新刊か。直江状の話はちょっと興味がある。直江兼続と家康の謀臣・本多佐渡守との間に「やり取り」があったという話。佐渡守の次男が後に兼続の婿入りしているから、謀臣同士一定の交流があったのはまちがいあるまい。どの程度の交流かが問題。謀臣同士である、簡単な関係ではあるまい。直江状に家康が「怒り狂った」という話だが、たしかに演技くさい。それを了解した上で直江状は書かれたと思う。家康の目的は石田三成に挙兵させて、正々堂々天下を奪うことにあっただろうから、直江状はその目的に沿っている。佐竹氏も二股をかけていたろう。家康が他を大きく上回ったことになる。
第六巻「使者」読了。こちらのシリーズも久しぶり。直江家に婿入りし、その後加賀・本多5万石の祖となった本多政重は旧直江家の家臣により家臣団を形成した、とあった。直江兼続は関ヶ原の敗北、領土縮小の責任をとるかたちで自ら直江家を断絶させていた(さすが兼続である)。もとは秀吉により与えられた30万石の雄藩である。その家臣たちの多くを加賀・本多家がひきとった、ということになる。気づかなかったが、そうだったのかもしれない。本多政重はおもしろい。直江兼続ほどの人物が後事を託したのだ、よほどすぐれた人物だったのだろう。むずかしいと思うが、彼を主人公とする歴史小説があってもよい。