WCPのサンドウィッチマン |
韓国ソウルで7/30-8/05まで開催されたWCP2008に参加してきた。
”Rethinking philosophy today"がテーマだったが、それとはお構いなしにいくつかのセッションをのぞいた。
ソウル大で開催されたのだが、D.チャルマーズ登場の「心の哲学」の特別セッションを聴いた帰り、池の近くを歩いていたら二人の学生につかまった。
「自分たちはソウル大学の法学部の学生ですが、アンケートに応じてくれますか、時間ありますか」ときいてきた。
次にでるセッションの予定はきまっていないし、まあ時間はあるかなあ、などと思っていると、そばの木陰に連れていかれた。
ベンチにすわって、じゃー早くしてね、などといいながら質問をまつと、
「哲学は過去、現在世の中に貢献してきたと思いますか。また今後も貢献しうると思いますか?」
そうか”Rethinking philosophy today"にあわせて聞いているのだ、と気づく。
どうも哲学など役に立たない、という前提があるようだ。
じゃー、ということで、「プラトンをみなさい、17世紀のジョン・ロックをみなさい、とくにロックの社会契約論は現代のマスタープランをきめたといっても過言ではないよ。マルクスもいるよね」
などと解答。
「でも、将来はどうですか?」と聞いてきたので、
「現在の標準的な理念は「持続可能な開発」だよね。しかし、今後、ずっとそれでOKというわけにはいかないのではないの。それに代わるどういう理念があって、どれを選ぶべきか、という議論が必ず必要になるよ。それは哲学の仕事でしょ」
「ふーむ、そうですか、じゃあ、次の質問に行きます。むにゃむにゃに関する私の信念にあなたは同意しますか」
思わず耳を疑い、質問用紙を目で追う。実際、そういう質問が英文で書かれていた。
思わず怒って、(なんだかサンドイッチマンの漫才みたいだなあと思いながら)
「君とは2,3分前で会ったばかりだ、むにゃむにゃに関する君の信念など聞いていないよ。聞いていないものに同意するもしないもないよ」
「なるほど、そうですか。じゃー、次の質問にいきましょう」
「最近韓国では、critical thinkingやcreativityが大事だなどとよく聞かされますが、これについてどう思われますか?」
「creativityが大事、などというのは当たり前だよ。どんどんcreativeであるべきだ」
「では、critical thinkingのほうは?」
「creativeであるためには、過去や現在について批判的に吟味することが前提になるよ。それをはぶいてcreativeなんてないよ。なんか、君たちはのんびりしたいみたいだね。つべこべいわず、ひたすら勉強すべし!」
「そうですか。では質問を変えます。いま世界には、反テロ戦争、エネルギー問題、グローバル・ウオーミング、民族紛争などいろいろが課題がありますが、あなたはそれらの優先順位をどうつけますか?」
うむ、これはよい質問。ちょっと考えて、
「waterとfoodsだね。それらの確保こそ最重要課題だよ」
この後も質問がいくつか続いた後、
「せっかくですから、ソウル大の学生のために推薦図書を挙げていただけませんか?」
推薦図書ねえ、法学部の学生さんのようだ、・・と考えて、
「ジョン・ロールズのA Theory of Justice」。
何、ロールズを知らない?君らは法学部の学生でしょう。こう書くんだよ、とロールズの綴りを書く。
「そうだね、センの本も推薦したいね。センはインド出身の経済学者で、道徳哲学の本も書いているんだよ。たしか1998年ノーベル経済学賞を受賞しているはずだよ。本の名前は今思い出せないけど、Amazon.comで調べればでてくるでしょ」
何、センも知らない?こう書くんだよ。Senね。
「最後に、あなたの名前を教えて下さい」
名前?仕方ないと、サインする。
「ついでにメールアドレスもお願いします」
思わず二人の顔を見て、「君たち安全なんだろうね」と言いながら、書く。
「安全だろうね」と聞いたとき、二人がちょっと顔を伏せた感じなのが気になった。
(WCPについて朝鮮日報が報じている:http://www.chosunonline.com/article/20080731000060)