2008年 08月 30日
賢治とイデア界 |
私は、宮沢賢治の受けた哲学教育もしくは哲学勉強に興味をもっているのだが、たまたまあるHPをながめていたら、賢治に「床屋」という小品があり、そこに「イデア界」ということばがあらわれているということを知った。いそいで調べてみたら、あった。次は「青空文庫」の「床屋」の最後の部分。
瓦斯の灯(ひ)が急に明るくなった。
「僕のひげは物になるだらうか。」
「なりますとも。」
「さうかなぁ。」
「も少し濃いといゝひげになるんだがなぁ、かう云(い)ふ工合(ぐあひ)に。剃(そ)らないで置きませうか。」
「いゝや、だめだよ。僕はね、きっと流行(はや)るやうな新らしい鬚(ひげ)の型を知ってるんだよ。」
「どんなんですか。」
「それはね。実は昔の西域のやり方なんだよ。斯(か)う云ふ工合に途中で円い波を一つうねらしてね、それからはじを又円くピンとはねさすんだよ。こいつぁ流行るぜ。」
「今どこで流行ってゐますか。」
「イデア界だ。きっとこっちへもだんだん来るよ。」
「イデア界。プラトンのイデア界ですか。いや。アッハッハ。」
「アツハッハ。君。どうせ顔なんか大体でいゝよ。」
(http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/4468_8267.html
底本:「新修宮沢賢治全集 第十四巻」筑摩書房)
まあ、旧制中学ではプラトンなど当たり前だったろうから、なんということもないのだが参考のため。「床屋」を書いたのは賢治の本郷時代。赤門近くで働いていた。ひまをみて東大の講義を聴講した、などということはないのだろうか。
瓦斯の灯(ひ)が急に明るくなった。
「僕のひげは物になるだらうか。」
「なりますとも。」
「さうかなぁ。」
「も少し濃いといゝひげになるんだがなぁ、かう云(い)ふ工合(ぐあひ)に。剃(そ)らないで置きませうか。」
「いゝや、だめだよ。僕はね、きっと流行(はや)るやうな新らしい鬚(ひげ)の型を知ってるんだよ。」
「どんなんですか。」
「それはね。実は昔の西域のやり方なんだよ。斯(か)う云ふ工合に途中で円い波を一つうねらしてね、それからはじを又円くピンとはねさすんだよ。こいつぁ流行るぜ。」
「今どこで流行ってゐますか。」
「イデア界だ。きっとこっちへもだんだん来るよ。」
「イデア界。プラトンのイデア界ですか。いや。アッハッハ。」
「アツハッハ。君。どうせ顔なんか大体でいゝよ。」
(http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/4468_8267.html
底本:「新修宮沢賢治全集 第十四巻」筑摩書房)
まあ、旧制中学ではプラトンなど当たり前だったろうから、なんということもないのだが参考のため。「床屋」を書いたのは賢治の本郷時代。赤門近くで働いていた。ひまをみて東大の講義を聴講した、などということはないのだろうか。
by omg05
| 2008-08-30 09:45
| 賢治
|
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